はじめに
 
2010年6月:東京

2010年2月「青少年の健全な育成のための条例」に関する改正案が東京都議会に提出されたことに鑑み、ウェブサイト上で文芸の表現規制を考察するため、青少年に害を及ぼす文芸として、青少年を対象にした性描写の作成に関する基準値を考察するため、以下の試みを計画した。※小説は今回の改正案には無関係とのこと、ですが。

追記
6月9日
8月7日



目的:15才以下のロム読者がいると想定し、性行為をネット上で開示する際に、R15およびR18表記の基準となる部位を定め、公開の限界点を考察する。

ステージ1:性描写なしの恋愛
ステージ2:キス描写ありの恋愛(配分10%以下)
ステージ3:キス描写ありの恋愛(配分50%以上)
ステージ4:性行為ありの恋愛(性器挿入なし、性器名の表記なし)
ステージ5:性行為ありの恋愛(性器挿入なし、性器名の表記あり)
ステージ6:性行為ありの恋愛(性器挿入あり、性器の描写なし)
ステージ7:性行為ありの恋愛(性器挿入描写あり、性器の描写あり)
ステージ8:性行為のみ(恋愛の要素はない)
ステージ9:性犯罪行為(レイプ、売春、暴力、殺害など)

サンプルは400字詰め原稿用紙換算で10枚から15枚前後とする。作中で性行為の主体者を18才以下とした。

上記の基準値は、一般化されたものではなく、当サイト内で使用する基準値として、公開する目的で作られたものなので、性描写をする方を批判する目的で作ったものではありません。また、ステージ7と8は人によってはもっと細かい基準値で作成を試みると考えられるが(例:性器名の表記は部位による、性行為の方法如何による、射精を含むか否か……など)、ここでは、一連の行為のうち、外生殖器の露出から接触、挿入、精液の放出までの一連の流れを性行為と表記し、ステージ7と8の行為自体に差を認めません。行為者の動機のみに注目し、青少年を対象にした快楽目的の性行為を排することとしました。
これらの基準値は、自分が創作する上で、どこまで出来るのかと考察したいが故に考えたものですので、意見がありましたらお寄せ下さるとありがたいです。



考察:上記の基準値にて、当サイトではステージ4まではR表記をしないものとし、ステージ5からR表記、ステージ8は有害として公開しないこととする。
なお、ステージ9は、文学上は意義のある分野であろうと、無償で配布するインターネット上では性教育を受けているものも無学のものも、等しく享受できてしまう現状に鑑みて、自主規制が相当であると考えたが、いかがなものか。本当は、性に関する現代小説の創作は興味があるので、ステージ9の公開の是非は悩ましいところですが、性行為の描写を抜いた表現法も考えてみようと思います。

上記の分類では、全てのサンプル描写を注意書き表記で公開可能だと、今までは考えていましたが、ちょいと厳しく考察した。
でも実は、ステージ4と5は性行為なの?と疑問があったり、有害と公開の差を分けるものは、恋愛感情のみと言うなら、ステージ5と6のサンプルは恋愛感情による性行為ではないだろう、とも考えられるので、あれも有害なのか、とか、実に悩ましい。
ちなみに、ステージ9では公開用なので性器名の記述を避け、性行為の描写も50%を超えないようにして、刺激を抑えています。ステージ8も同様に、公開用の処理として性器の具体名を回避してあります。ステージ7がR18として公開可能かどうかが分かれ道かな、と考えています。

読者にとって納得できる分類かどうか分からないけれども、意見をもらえると嬉しいです。公開限界に関する新たな意見がもらえるとなおありがたい。
(エロさが足りない、という指摘? いや、そこは今回の考察内容からは外れます (^ ^;)ゞ



6/9 追記
以下の資料を付け加える。
・東京都の「青少年の健全な育成に関する条例」現行法 (http://www.reiki.metro.tokyo.jp/reiki_honbun/g1012150001.html)
・現行法の規則 (http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/08_jyourei/08_p2.pdf)
・2月に都議会に提出されたと思われる「改正案」 (http://www1.odn.ne.jp/himagine_no9/20100224.pdf)
・青少年の性意識と性行動に関する 調査研究報告書(H14 兵庫県) (http://www.hanshin-awaji.or.jp/kenkyusyo/seika/katei/pdf/h14_01.pdf)
・20才以下の母体保護法による人工中絶について (http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/08/dl/data_006.pdf)(http://www.world-walker.com/sex/datai_anual.htm)
・映画倫理委員会の四区分 (http://www.eirin.jp/see/)


東京都の「青少年健全育成条例」現行法と改正案を見て、新たに付け加えた点をまとめると、「ポルノに対する意思表明だ」って思った。ほとんどの政策は現行法で実施は可能だと私は思う。ただ、セックスに関する情報の封じ込めを通して、社会にモラル厳守を申し上げたいのだろう。一番の目玉は「インターネットの規制」だって思いました。それも、パソコンではなく、携帯電話。狙いは学生たちが情報集めに使っている携帯電話を封じることにあるって思いました。改正案のかなりの部分がそこに割かれているので。漫画家や出版社がかなり早い段階で反対表明してマスコミに出ていたが、プロパガンダご苦労さんって感じがしてきた。紙媒体の漫画の取締りなんか既に今の現行法で取り締まれるんだから、都議会は彼らの反対なんて眼中にないだろうって、思いました。

で。いよいよ、インターネット上に規制が吹き荒れるのかって……既に静かに進行しているみたいです。読めなくなった小説が幾つかあります。全て、R指定小説です。「らぶえっち」といわれるものが、私の携帯では読めません(いつのまに……)ちょっと前から、あぶないなーと思っていた小説だったので、実は納得しています。上の分類だと、ステージ8をステージ6の手法で書いていた小説群です。

もう一つ、私が気にしているのは、セクシャルマイノリティ、について。日陰にいる同性愛者やエイズ患者、セイフセックスを伝えているボランティアなんかは、ちゃんとフィルタリングを除外できるんだろうか。そこは消さないで欲しい情報だ。セクシャルマイノリティはただでさえ、アクセスの難しい人たちだ。性交渉に悩みがあっても、なかなか人には相談しにくい。彼らにとっては、携帯は密かにできる情報収集法だって予想しています。世の中には、死にそうな状況でも、堂々と電話相談できる時間も場所もない人がいる。田舎だと、アクセスが難しく、村社会の中で苦しい状況を過ごしている。彼らにとっては、電話機を通して声を出さなくてもいい、気兼ねなくセックスに関する知見を得られるインターネットは重要だ。思春期の性同一性障害者が、いきなり大人の保健師に相談できるものだろうか。相談するほどの問題が無くても、同じ悩みをテーマにした創作物を読んで、勇気の出た同性愛者も知っています。彼らは意外に繊細で、配慮が必要だって思っています。そういう配慮をフィルタリングで何処までできるのかを聞いてみたいものだ。
 

兵庫県のアンケート調査は、五千以上の対象で回収率はまあまあですが、統計処理の手法がまだよく判っていないので、鵜呑みに出来ません。男女差があるなら、性別で調整は取ったんだろうか? 兵庫県は都会(神戸)もあるし、日本を代表するような数値かどうかは分からない。性的に成熟の早い子が多い土地かもしれないし。やたらと綺麗な数字なので、そこが疑問。調査したのが「家庭問題研究所」って、調査前から結論ありきだったような気もしないでもないが。でも、予想通りの結果でした。未成年者の情報収集がほとんど友人とビデオと漫画って、当たり前じゃないか(笑)エロビデオの真似をするってのも分かる。ビデオを見ているから、膣外射精なんてするのだ。日本の性教育ではそんな性交方法なんて教えていないはずだが、実際にはそういう曖昧な避妊法で、学生が妊娠している。友人から聞く元ネタが、経験値のみだなんて、誰も思ってはいない。先輩がビデオを見ながら試みた経験を人伝に又聞きしているだけでは?

アンケートには、学生の生の声が紹介されていて、興味深く読みました。性交渉は個人の問題だからほっといて、という意見が性交経験者に多かった。

人工中絶のことを、隠語で「どぶさらい」なんて言いますが、ひどい言葉ですね(笑)
普通の医師は、法律上は殺人に当たる人工中絶をやりたがらない。だけど、1970年代後半以降、未成年者の望まない妊娠による人工中絶が増えていて、今も増減を繰り返しつつ、高い水準を維持している。少年、少女を救うために、進んで「どぶさらい」している産科婦人科医もいる。コンドームの使い方を教育しろ、というのが、彼らの意見だ。もっと性に関する情報を子供に与えて、馬鹿げた妊娠を減らせ、と言っているのだ。今はベビーブームらしいけれど、児童の虐待件数も増加中だったと記憶しています。性に関する情報も、育児に関する情報も……子作りする前に、世代間で伝えられるといいんですが、ほっといて、か(うーむ)。
 

映倫を調べてみた。
インターネットも映倫規定を準じる人が多いので。2009年5月に改正されたそうです。

G:誰でも安心して見れます。
PG-12:12才以下の児童が閲覧するには、保護者に相談、または解説が必要です。
R15+:15才以上の方が見れます。
R18+:18才以上の方が見れます。
映倫がホームページ上で書いているのは、年齢制限だけ。細かいところは、よく判らないけれど、Wikipediaによると、性に関してはPG-12でほとんどが規制される。PG-12の定義に加えて、R15+ではいじめ、R18+は犯罪行為や麻薬情報が付加されて、反社会的な内容とみなされるみたいです。だから、ここのサンプル集では、以下のようになる。
ステージ1−4:G
ステージ5、7:R15+(放送禁止用語の使用から)
ステージ6:PG-12
ステージ8:R18+(反社会性行動>薬物使用、未成年者の飲酒、不特定多数の公然わいせつ容疑、金品の授受と引き換えの性交渉は売春の容疑も)
ステージ9:PG-12(性交の後、彼女を殺していれば、R18+だったと思いますけれど、性器はかかれていないし、表現ギリギリ。実は、性交渉に金の取引が無いので、売春ではなかった。取引して合意の上だから、強姦でもないし……あれれ? やっちゃった)
ちなみに、PG-12は分類されても、番組表に明記は不要との事。R15+以上で、新聞や広告にもRは明記が義務付けられます。

インターネット上では、PG-12は特別に明記は不要だが、親がするべき注意書きを添えておく方が、親切なのかなって思います。R指定は、明記だけでなく、アクセスに制限があって当然だろう。一般サイトからのリンクではなく、別の入り口からアクセスするように計画する、とか。入り口を別にして提供した方がいいと思いました。



8月7日 追記

再考察して、基準を以下のように決めました。

G(無表記)>>ステージ1、2、4
PG>>9

R>>ステージ3、5、6、7
※このうち、ステージ3については、具体的描写を減らせば、Gで対応(一般的な恋愛小説)
※5については、性教育のサイトなら、Gだと思います。ただし、性器名の列記については、注意書きと解説が必要だと思いました。
※67に関しては、具体的描写を減らして、テーマが成り立たないようならば、公開は別サイトで行う。描写の量と具体性が無くても、読み物として価値があるならば、PG対応(注意書き)をしようと思います。
※ステージ8は、非現実的な官能を、読者と共有する目的だけで作られているため、具体的描写があってもなくても、非公開です。R指定して公開することも、私はしません。

最後に
上記の規定は「CONTO BLOCO」でのみ適用しようと考えています。
官能性の描写は非常に勉強になるので、官能描写自体を否定することはしません。官能小説の作成については、個人的には挑戦したい分野ですが、このサイトではやらないということです。



性行為以外のR指定に関しては、考察不足です。暴力や犯罪行為に関しては、当サイト内では表記をしていません。死体の描写および狂気の描写、自殺の推奨、毒物や爆発物の詳細な説明などは注意して回避しているつもりです。問題がありましたら、その都度お知らせ下さい。

公開中に問題が生じた場合は、メールフォームから連絡を宜しくお願いいたします。


tomoya@conto_bloco 2010