ペンギンくん、白亜紀の恐竜と共生をもくろむ!
2011年度秋の深夜アニメ「ピングドラム」のごとき、ふざけたタイトルではありますが、そこが結論です。生存(再生)戦略ー! 地球と共にゆっくり生
温く
生き抜こう!
私が日本で最も好きな季節は、5月と10月だ。はっきり言えば、その他の季節は苦手だ。6月から雨季が始まり、7月から9月にかけては暑くてたまんね
え。11月を過ぎると物悲しくなり、12月から2月にかけては寒くてたまんねえ。3月と4月は割と好きなほうですが、体調が最も崩れるので、気が抜けね
え。
おかげさまで、夏と冬の光熱費は5月の二倍になります。うん。
何か間違ってるね、と思います。エアコンを使わずにすむ季節が二ヶ月しかない?! 日本は住居に関する技術革新を起こすべき時期にいると思います。金が
かかって仕方ねえ。
温暖化は我が家にとって、家計を圧迫する由々しき事態であります。
地球温暖化が国際的に問題として取り上げられたのは、1970年代のこと。既にこの時点で(あ、あたし生まれてないからわからなーい!)という奴さんも
いるだろう。いや、四十代ぐらいの方は(んなもんは知ってらア)と鼻白むのかもしれないが。一応、説明だけはしておく。
ハワイにあるマウナロア気象観測所が大気の状態を計測してまして、大気中の二酸化炭素量が観測開始以来増え続けていることがわかった。二酸化炭素っての
は、人が呼吸をして吐き出すときに増えているアレです。その気体自体は別に毒じゃない(←微妙に嘘。多すぎれば有害です)。普通の状態でも大気中に存在し
ている、地球の大気組成元素の一つであります。大気中には0.03%以上が既に存在している。
[1]
では、その物質が増えたらどうなるというのか。当時の科学者が推定した結論が「温暖化」であったのです。1970年代までは「地球は冷えてる! 氷河期
再来!」と騒がれていたんですが、それが一気に覆った。
[2][3][4]
当時、温暖化は本当に実現されるのかと疑問視されていたけれど、観測データで裏づけが進み、まあ、暖かくなりそうだな、と予想されます。この地球規模の
改変に対し、人間は生き抜けるのか。
地球が暑くなったら何が困るのか。
私は冬の苦手な温室育ちなものですから、いいじゃないの、と思う。人間が生きられる限界内の温度であれば、別にいいんじゃないのー、と声を大にして叫ぶ
(←反論覚悟)
余談ですが、人体が生きられる環境温度は単純に平均気温だけでは決まりません。気湿と気流も関与してくる。だけど、一般的には体温よりやや低い28度プ
ラスマイナス5度前後で、我々は被服なしの生存が可能だ。
[5]
その範囲を超える環境においては、防寒着や冷房施設などが必要になります。衣服文化と居室空間を操って、私たちは生存しているのだ。
地球上で人間が丸裸で生きられる環境下ってどこだよ。それはエデンだよ。いやいや、赤道周辺に広がる季節のない温かい場所だけだよ。既に我々は、人工環
境なくしては生きられぬ身なのです。生存可能域を、競争原理で追い出された生物種のひとつだ。今、熱帯域に戻ったところで、その場所で生き抜いてきた他の
生物を追い出して、現存の70億人がその場所で生きられるだろうか! 無理!
そんな我々が、自分のことは棚に上げつつ、仏様のごとき慈悲を宿し、環境問題を考えているのである。地球環境問題を考える時、80年代に流行った答えは
「原始に戻ろう!」だったけれども、人間はもうエデンに帰りたくても帰れないのだよ、諸君っ!
話を元に戻し、温暖化の弊害を考えてみる。
気温が熱くなると夏が長くなる、熱帯夜が増える、熱中症が増える、熱帯域にいる生物が北上してマラリア(ネッタイシマカを媒介に広まる疾病名です)が流
行る、ヒートアイランド現象(都市域の加熱現象)が激化する……マスコミで報道されているので、これらの話をどこかで聞いたことがあるだろう。70年代に
生まれてなかった読者であっても!
だけど、これらの問題は「大量絶滅」を起こすまでの問題ではない。大量絶滅って、実は難しいのです。今からおよそ6500万年前にあった白亜紀の大量絶
滅でさえ、過去に地球上で起きた絶滅エピソードの中では影響は小さい方らしい。温暖化よりは寒冷化の方が、怖い現象だ。水中においては、水温より溶存酸素
の方が生物には重要です。水辺の酸素不足でかつて地球上の生物が九割以上絶滅したことがあるのだ。
[6][7]
温度変化に対しては、人間には既に生き抜くための技術がある。人間は零下マイナス六十度の極寒地から五十度以上の灼熱地獄で生きている。地球の平均気温
が三度上がったところで、死ぬものか。海水面が上がったところで、生物学的に絶滅はしない。
ですが、人間以外の生物のなかには「絶滅」するものがあると予想される。
その一つが極地に暮らすペンギンたちです。
ペンギンが世界から消えたって、何が問題なのよー、と叫んでいる人もいるのかもしれないが、大問題だ!とまずは簡単に受け流して、ペンギンの説明をして
おく。
ペンギンって何だ。BUTAPENNさんの親類か、いや、生物学的な話。
実は今回のフェスタに参加しようと思ってから、この生物の由来を調べた。飛べない鳥で南半球にのみ生息していて、寒冷環境を好み……という所までは知っ
ていた。NHKの特集番組が好きなので、卵を抱えてヨチヨチ歩くお父さんペンギンやお母さんペンギンをほくほくしてみてました。でも、それ以上のことを知
らなかった。
エッセイを書こうと思い、改めて調べ直す。ペンギンって何ものぞ?
ペンギンとは……動物界 脊索動物門 脊索動物亜門 鳥綱 新顎上目 鳥類ペンギン目
ペンギン科に属する「水鳥」の一種。アホウドリに近い種だという。現存するのは6属で、17から19種がいるといわれている。生物の分類は専門家の間でも
難しい問題らしく、この数字は人によって異なっていた。種を特徴付けているのは頭部の形だという。
[8][9]
この辺りは人間に近い分類法を使ってるのかな、と推定します。水鳥に属するとはいえ、この鳥は飛べないし、陸上を二本足で直立歩行(人間っぽくないです
か?)し、首が短くていらっしゃる。人間と猿を分ける形態学的な特徴の一つが頭部の骨の形だ。直立二足歩行の形態学的根拠として、人類学では脊椎に連なる
後頭部の形が重視されている。科学的にそれが本当に直立二足歩行の条件として妥当かどうかの問題はあるけれども、それが人間の条件である。ペンギンもその生態
から、頭部の形で分類されてるのだろう。
[10]
その水鳥の一種、ペンギンくんは寒冷環境が好きなのだから、氷河期ぐらいに誕生したんじゃないの?……という漠然とした思い込みがあった。比較的最近地
球に生まれた種族だと思っていたのである。
ところがどっこい! 何と白亜紀には存在していたらしいのであります。白亜紀とは今から1億4500万から6500万年前の時代。パンゲア大陸が分裂し
てプレートテクトニクス(マントルの活動で地球上のプレートが動く)が生まれた時代である! あのティラノサウルスやトリケラトブスがいた時代である!
ユカタン半島に巨大隕石がぶつかる前の時代である!
水鳥としては白亜紀前期(1億1000万年前ごろ)にガンススという生物がいたことが知られている。この系統にいるヘスペロルニスという鳥の見た目がペ
ンギンっぽい。体長は150センチから180センチで直立、短足、翼はほぼない。出土は北半球(日本を含む)なので、現存のペンギンの祖先なのかは不明だ
けども。ヘスペロルニスは白亜紀後期に絶滅した。
[11][12]
ペンギンの祖先として、6200万から6000万年前の地層に化石が見つかったワイマヌが考えられている。体長はヘスペロルニスの半分以下で、65セン
チから75センチ。隕石衝突後のK−T境界を越えているので、寒冷環境に適応して体を小さくして生き抜いたのかもしれない。ワイマヌという言葉は「古代ペ
ンギン」という意味らしいが、現存の種の祖先であるかどうかは不明らしい。分類できない理由は復元イラストを見る限りでは、首の長さと頭の形っぽい。ペン
ギン目のどの種の祖先になるのか、わからないのかも。
[11][12][13/picture][14/picture][15][16][17]
5500万から1000万年前までの間に、ペンギンは17属50種いたらしい。歴史ある地球の構成員ですが、既に、半分以上の種が絶えていることになり
ます。もちろん、それを言うなら人類はサピエンスしか生き残っていない……古代類人猿はサピエンス以外は全て絶滅した。我々は唯一生き残っている貴重な類
人猿だ。
[18][19][20][21]
白亜紀にペンギンの祖先がいた可能性はある。学術的にそこを立証することは難しそうですが、我々がロマンを抱ける要素はある。ペンギンは白亜紀の環境に
適応可能なのか。
白亜紀について、簡単に書いておくと、この時代の地球は温暖だ!
そろそろ冒頭で叫んだテーマを想起して、にんまりしている方もいるかもしれないが、まだピンと来てない方に語る。白亜紀ってなんぞ?
地球の歴史は46億年。35億年前には最初の生物が地球に発生。それから、生物種のビックバン(大量の生物種が生まれた時代)が起き、海の中から追い出
され陸上に上がる生物が増えてくる。顕生代は古生代、中生代、新生代の三つに分化できる。白亜紀は中生代の後期、白亜紀の終わりと共にわれらの新生代が始
まった。
[22]
新生代では氷河期と間氷河期が交互に繰り返されるようになる。人類は寒い地球に適応してきた生物種だ。白亜紀の地球環境は温暖で、海水面は高い状態を維
持していたと考えられている。海水温は今より高く、中緯度でも26℃はあったという。
[23][24]
緑を増やせ、と今の現生人類は言うけれど、緑の多かったかつての地球は、酸素の大気組成に占める割合が25%を超えていたと考えられている。今の地球は
21%の濃度だ。大気組成だって長い歴史を見れば、変動しているものなのだ。現在の割合が、この惑星の絶対基準というわけではない。
[7]
古代地球環境は想像を絶する。誕生初期の地球は火星に似た大気組成だったと考えられている。二酸化炭素は90%以上、酸素は0.4%と、現在の割合と逆
転している。当然、こんな環境下で人類は生存不可能だ。現在の地球環境は、この星に存在してきた生物たちが生活して廃棄物をたくさん放出し地球環境を変え
てきたから、生まれたバランスなのだ。星はこんな大気組成なんて自分から提供してくれたりはしない。
[5]
地球上に暮らす全ての構成員が地球環境に関わりを持ち、自分自身が生きやすい環境を作りながら、それを維持させるため密接に関わってきている。そして、
生存競争の多数決原理で漏れてきたものが絶滅してきた。人間が今やっている行為は、多数派に与することができるのだろうか。他の生物にとっても生きやすい
環境作りに貢献できているか。もしかしたら、いつのまにか少数派の方に入ってしまってはいないか?
現存するペンギン六属のうち、もっとも低緯度、つまり温暖な環境下にいる生物は、赤道直下に暮らすガラパゴスペンギンだ。ペンギン目の生物は寒冷環境の
みに適応する生物ではない。いや、もちろん、極地にいる皇帝ペンギンがいきなり赤道直下には来れません。動物園の中なら別ですが。
[25/picture][26/picture]
生物の生存に対する粘り強さを私は信じている。ペンギンはおそらく地球環境が変わっても、先祖がえりの遺伝子を駆使して生き残るだろう。温暖化で大量絶
滅なんて起きないかもしれない。
しかして、われらが頼りない類人猿はどうなんだ?
技術力が絶えたら、あっさりと絶滅してしまいそうである。だって、我々の仲間は(もう戦えねー)と白旗を揚げて絶滅してしまっているのだ。我ら以外に生
き残っている種はいない! 人類ほど孤独な生物種はいません。
大気中に二酸化炭素を大量に放出している人類は、逆に自分が適応しにくい温暖環境をわざと作って、自分ひとりだけ首を絞めているように感じられるのだ。
私には。
南極域にいる皇帝ペンギンを絶滅から救う、という名目で温暖化を解決すべく動き出している人たちがいる。だけど、そのペンギン一種のみが重要なわけでは
ない。皇帝ペンギンはわかりやすいシンボルだというだけだ。彼らは地球の寒冷環境を生き抜いてきた生物のシンボルで、我々類人猿の狭い生息可能域を実現す
るための環境指標生物ではなかろうか。南極域のペンギンが絶えるような環境になったら、人体が環境から受ける影響はいかほどになるというのか。短期的には
生き抜けるとは思いますよ、技術があるから。でも、技術力の維持には、エネルギーがいる。人間が使用できるエネルギー源には限界がある。エネルギーがなく
なったら、我らはあっさり……消えてしまうのではないでしょうか?
地球が温暖環境に移行し、生物種が再び白亜紀のごとき生存競争を激化させた時、ペンギンたちは案外涼しい顔をして生ぬるい水の中を首長竜と共に泳いでい
るかもしれない。その時、私たちはその環境の中にいるのかな。
地球環境は太古の温暖環境に再び戻るのだろうか。いや、70年代の科学者が予言したように地球は寒くなって活動を停止するかもしれない。私は寒くなるよ
りは暖かい方がいい。だけど、そのスピードを落として、新たな生活技術を開発する猶予ぐらいは、自分たちの生存戦略のために残しておきたい。
6月1日から衣替えですね……環境省は今年「スーパークールビス2012」として、ポロシャツを公式と認めましたが、日本の夏は脱いでも暑いっつーの。
衣服対策だけでは人間の努力も焼け石に水であります。今年もきっとエアコンを使うに違いない。電気機器が動くから冷却機能が必要になる。経済活動をもう少
し緩やかにできたらいいのだ。
[27]
一番いいのは、7月と8月をフランス人のように長期のバカンスで休んでしまうことだ。都市機能は真夏にお休み! これでどれだけ冷えるだろうか。気軽に
長期の避暑に行ける社会を作って欲しいなあ。暮らしを固定させるから苦しむのだ。
人間もまた狩猟採集時代に戻って「ノマド的に」暮らせばいいと思う。一ヶ所に留まらずに動き回って生き抜くのだ。渡り鳥のように。我々は、働く場所と避
暑地、避寒地の間を移動しながら生きる術を、かつての祖先から学んだらいいのではないかと思う。
了