創作術について

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構想 

1構想はなぜ必要か



 妄想と小説は明確に違うものらしい。
 だが、私はそれを長いこと理解できてなくて(どうして最後がまとまらない話になるんだろう)とずっと不思議に思っていた。
 上手に物語を作れる人は、途中で伏線も交えて、読者の期待を裏切るどんでん返しも入れ込んで、ラストで「ああ、読んだー、よかったー」と思えるような話を展開する。
 その展開の技術が長いことわからなかったけれども、最近、ようやく得心した。

 計画書で最初に考えておけばよいのだ!

 だが、妄想中は、あれがああなって、これがこうつながって……と頭の中で完結できていて矛盾なく見えている。まるで映画のように流れていくので、これをそのまま文字にすればいいじゃーん、と甘く考えていた。だから、改めて計画書に書き起こす必要を感じていなかった。だが、書き出してから、人物が勝手に走ったり、予想外の出来事が起きたりして、すこしずつ暗雲が垂れ込めてくる。
 そして、ラストで「ああやっちゃった!」と叫ぶことになるのである。

 私がプロットの必要性を感じたのは、拙作「pleasure principle」という小説の八回目の書き直しを始めたころだ。話のイメージだけがあって、作りたい欲求だけがあって、使用するオブジェクトもキャラクター設計も終わっていたのに、話としてどうにも収拾のつかないラストになる。こいつはどうしようもねえな、と作者ですら思いつつ、何か手はないかと思っていた時に、話作りのうまそうなウェブ作者に出会った。
 一人がnekoiさんで、もう一人が白馬黎さんだ。

 nekoiさんは、知人からおすすめされたファンタジー小説の作者だった。冒頭に出てきた小細工をうまくラストで使用する、その鮮やかな騙しっぷりに惚れまして、普段の小説作りのコツみたいなものを聞いた。
 実は、小説作りのバトンなどもまわしてことあるごとに探ったりしたのですが、その返答はよくわからず。最も参考になった情報は、nekoiさんが普段使われているツールの情報の方だった。nami2000というツールなのですが、階層化できるメモ帳みたいな奴で、これを使って話を作れば、章ごとに文章を入れ替えたり組み替えたり自由自在で非常に助かる。このツールをnekoiさんが使っているならと、私もすぐにダウンロードして使い始めた。実際には、使いこなすまでに少し時間がかかったのですが。
 このツールを使って、最初に練習した話が「二輿物語2」で今も連載中です。

 もう一人参考にしたウェブ作家は白馬黎さんだ。
 この方は覆面作家企画3というオンラインの遊び企画の同じグループになったことがご縁で、作品を読ませてもらいました。印象としては、コンパクトな話を作ります。結末で、何かがきちんと腑に落ちる。つまり、オチのある話を作れる。話が最初から最後まで計算されているに違いないと思い、創作法を聞いた。
 実は、細かく教えていただいたにもかかわらず、そのほとんどが理解できなかったというか、自分には合わない創作法だったのですが、面白かった視点は二つありました。一つは、クライマックスとクラシック音楽を同期させるという発想(それで山場までの流れを7つの山で作るということを教わりましたが……)、もう一つは会話文を繋げて話を最後まで一度組んでしまう、ということでした。
 その、会話文でラストまで書く、という最後の秘訣が私には肌に合わなかった。地の文を書けないことにイライラしてしまって、何ともならずに習得できなかった。それでも、事前に最後まで話を作っている、というところに感銘を受けたわけであります。

 つじつまの合う話を作るには、二つの方法がある。
 全部書いてから文章を切り貼りして訂正していくタイプと、最初からラストまで見通して作るタイプだ。
 どっちがいいかなー、と考えて試行錯誤してみたが、やってみて思ったのは、両方必要だよ!ということでした。つまり、計画してから書きはじめ、書き終わった後でうまく書けたかどうかを考察する……これが創作なのだ、とやっと気がついたわけであります。

 構想とは、数万にも上る文字の列挙に意味が生じるように、事前にその文字の流れを調整し、物語の流れを理解して創作した後で、それを再度確認できるようにしておくもの、です。これがなくして、意味のある創作はできない。
 本能で話が指先から流れ出ていくんだよ、俺は天才なんだ、俺の頭の中には既に生きているキャラクターがいて彼らが勝手に動いて物語を生み出し……そういう方にはプロットは不要です。
構想